“南洲翁遺訓”を指導中


“南洲翁遺訓” 講読中

早大 文・文化構想
一橋大 要約問題のための演習


第十三ケ条 
租税を薄くして、民を裕にするは、即ち国力を養成する也。故に国家多端(たたん:多くのことにお金が必要)にして、財用(資金)の足らざるを苦むとも、租税の定制を確守し、上を損じて下を虐たげぬもの也。能く古今の事跡を見よ。道の明かならざる世にして、財用の不足を苦むときは、必ず曲知小慧(きょくちしょうけい:悪知恵の働く)の俗吏(ぞくり:官吏の蔑称)を用ひ、巧みに聚斂(しゅうれん:租税を取り立てること)して、一時の欠乏に給するを、理材に長ぜる良臣(優秀な役人)となし、手段を以て、苛酷に民を虐たげるゆえ、人民は苦悩に堪へ兼ね、聚斂を逃れんと、自然譎詐(きっさ:いつわる)狡猾に趣き、上下互に欺き、官民敵讐(てきしゅう:仇敵)と成り、終に分崩離拆に至るにあらずや。



NHK [Eテレ]でもやっています。
2018年1月17日(水) 午前5:30~午前5:55(25分)
100分de名著 西郷隆盛“南洲翁遺訓” 
第2回「“敬天愛人”の思想」


一橋大 2015年 問題2
田口卯吉「青年独立の困難」より

余輩私に何を以て世の読書あり、学識ある青年が、此の如く身を誤るもの多きやを考察するに、蓋し最初学校を出づるに当りて、毅然として独立独行するの気慨に乏しきに因るなり。貧困に甘んじ妄りに人の下風に立たざるの精神に欠くるに因るなり。然
り而して最大原因たるものは彼れが天性の美なることなるが如し。何を以て天性の美なるは青年をして其身を誤らしむる乎。余輩
請ふ今之を述べん。夫れ天性美なるものは、読書に巧みにして文辞に長ぜり。是を以て学校にありては教師に愛せられ、校友に重んぜられ、嘗て修学の苦あるを知らざるなり、是れ亦た可なり。其学校を出でて世務に当らんとするや、教員校長等の推薦する、必ず此人を以て第一となす。是を以て此人や世間風波の困難なるを知らざるなり。抑も世間風波の困難なることを知らざるものは、鍛錬せざる鉄の如きものなり、其天性如何に美なりと雖も堅緻なる所なし。然り而して此風波や青年の勇気勃々たる時に当りて経過せざるべからざるものなり。然るに彼の青年は其天性美なるの故を以て、此必要なる煉磨を経ずして、一飛して厚給を受け、仕送りの学資未だ用ひ尽さざるに、早く錦衣玉食の情味を解するに至る。天下之より不幸なるはなきなり。鳴呼此人や之より如何なる生涯を為すぞや。最初には左までにあらずとも、数日にして其地位の安固と、給料の源泉とは、全く頭上一人の意見にすることを解するに至らん。数月にして其栄達と危険とは、其意見を奉じて、勤勉するとせざるとに存することを解するに至らん。
数年にして其人の意を迎へて鞍掌従事するの最も安全にして最も利益ある方法たることを解するに至らん。鳴呼是れ此人の
為に止むを得、ざるの進路にして、而して又た此人をして天然の勇気を沮喪せしむるの進路なり。此時に於ては、此人定めし妻あるべし、定めし児あるべし、而して驕奢の美味、既に其心身に浸染したれば、又其地位を下だして独立独行の新舞台に出づる能はず、勢ひ上者の命是れ奉じて、役々是れ務めざるべからず、人生固有の勇気を消耗せざらんと欲すと雖も得んや。況んや、教育の進み英才の出づるは、年毎に新なれば、此人の漸く沮喪するに当りて慈に新鮮なる一青年を出し、之と競争せしめ、優勝劣敗の理に因りて漸く排斥の運に向ふは止むを得ざるの命運なるをや。白楽天の所謂、百年苦楽因他人とは特に婦人の身の事にあらず今の青年俊才の生涯も亦た然るものあるなり。



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